ゴキブリと科学

 

ゴキブリ 観察

《日本のゴキブリ(Japanese cockroach)》

直し目属の昆虫、ゴキブリは世界中で約3500種が知られています。これらの昆虫は暗闇を好み、主に夜間に行動し大部分のものは雑食性ですが、共食いもします。世界的に分布しています。少数の種だけが人家に住み、最も数が多くて駆除し難い屋内害虫(難退治性昆虫)である。一般に、14~16個の卵が卵鞘(写真のもの)の中に産みつけられます。日本のゴキブリはワモンゴキブリ(Periplaneta americana)と呼ばれ、大形種で厨房設備の普及ともに南九州から北へと分布を広げてきました。

 日本では大形種の空を飛べるクロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)は関東より以西の屋内に多くみられ、茶色のチャバネゴキブリ(Blattella germonica)はビルや食堂に多く見かける種で全国的に分布しています。

《ゴキブリは伝染病(Infectious diseases)を媒介する》

 ゴキブリが伝染病の媒介者である可能性として、ドブネズミのように、下水道から屋内に移動してくることは、昔からよく知られています。屋内性の種を含めゴキブリが小児まひウイルス、コクサッキーウイルス症(手足口病)や、野口英世博士で有名な黄熱病ウイルス等、種々のウイルスを体内にもっていることは、よく知られています。

 また、人の病気に関係がある、原生動物やカビの他にチフス、ライ、食中毒、ペストのような病気を起こさせる細菌がゴキブリに関係していることも解っています。また、条虫類(Cestoda)のサナダムシ等の成虫もゴキブリによって伝搬される病原体の最大のグループであり、普通、猫や犬の腸内に寄生していますが、幼虫はカエルやヘビの筋肉の中にも発見されており、ゴキブリによって伝搬される病原体の最大のグループです。他に注目すべき点は、ゴキブリによって起るアレルギー反応(主に糞による)があるので、幼児の要る家庭では要注意する必要があり、こまめに清掃をすることが求められます。

《食文化、珍味(Dainty bits)食材としてのゴキブリ》

 しかし、一方では、ゴキブリが世界の珍味として賞味され、中国では、地方によっては卵鞘を集めてフライにして食べる習慣があると聞いています。ゴキブリは食料品を食い荒らすだけではなく、書籍や書類を破損する。なぜならば、ゴキブリはシロアリと共通の祖先から進化した種であると考えられており、シロアリのセルロース(木材や紙等の繊維質)を消化分解し、糖に変えて利用する能力は腸内に鞭毛虫が共生しているからです。鞭毛虫の出すセルロース分解酵素、セルラーゼの働きによります。

《ゴキブリの天敵(Natural enemy)》

 ゴキブリの主な天敵はカマキリやクモですが、コウモリ、ネズミ等の小動物もゴキブリを捕まえて食べる習慣があります。ゴキブリを見て、ぞっとして怯(ひる)むのは、人間の他に、霊長類のチンパンジーや猿も、その姿形に恐れ嫌がる習性があります。

《ゴキブリの性ホルモン(Sex hormone)》

ゴキブリは外敵から身を守るために、悪臭のtrans-2-ヘキサナールを肛門から分泌して身を守りますが、このアルデヒドは、タバコの煙にも含まれる臭いの成分ですが、性ホルモンであり、メスは触覚によって、その化合物を感知すると直ちに、メスは性ホルモンを放出し、雄を誘引します。

《ゴキブリは、なぜ侵入するのか》

 ゴキブリは何故、家の中に侵入するのか?

その理由は二つあります。太古の昔から、ゴキブリにとって、人間との共棲は犬猫なみの関係にあり、安全な産卵場所であると同時に、格好の住処です。もう一つは餌にこと欠かず豊富な点にあります。

《ゴキブリの侵入経路(Invasion course)は何処》

 ゴキブリを見かけると誰しも、何処から侵入したのかと考えがちですが

主な侵入経路は人の出入りする入り口、網戸の隙間など、換気扇の隙間は絶好の侵入経路です。最近は下水管の構造や厨房設備の進歩から、フィルタ類も完璧に装着されており、最近では、下水管からの侵入はありません。

 家の中に蚊やクモを見つければ、必ずゴキブリにも侵入されていると認識することです。侵入路を完全に封鎖しても、遮断しても、本当の解決にはならず、それほど大きな意味をもちません。

 流し台の上を凝視して、ゴマ粒状の黒くて丸い糞が落ちていないか先ずは確認すること、糞が一つでもあれば大変です。またゴキブリを一匹でも見かけたら、以前から済み続けていたゴキブリと見るのが正解で、気がつかなかっただけなのです。

 成虫の侵入のみ気を配っていると、ふ化したての5ミリほどの幼虫の存在を見逃すことになります。小さいから良く凝視して観察しないと見逃してしまいます。どんな隙間からでも侵入し、スパイダーマンのごとく敏捷で、炊事場の匂いの方角を長い高感度の触覚(嗅覚も兼ねる)センサーで探し当てます。

《ゴキブリを一匹見かけたら100匹いる?》

一度ゴキブリに入られたら、半永久的に住み続けられます。その理由は、ゴキブリは退治するのが困難な、『難退治性昆虫』だと認識することです。卵鞘を探してつぶし駆除するしか確かな方法がありません。ふ化したての幼虫も親に似て、生まれつき足が速く、嗅覚センサーは犬以上に敏感で、ゴキの幼虫は特に水場の臭いに敏感であり、その長い嗅覚(触覚も兼る)感度は凡そ10mもあります。ふ化すると水場に向かうので、目を凝らして見つけなければなりませんが、4~6匹は発見不能になります。この幼虫は、夏場は1~2ヶ月で成虫になり、卵を1~3個産み落とします。1個の卵から平均14匹の幼虫が生まれます。幼虫は飲まず食わず3週間生ることができます。また、成虫は氷点下15度でも、石や落ち葉の下、段ボールの隙間などに潜り越冬します。

《ゴキブリの産卵(Laying eggs)》

産卵において、一個の卵からふ化する幼虫の数は平均14~16匹ですが、夏場は20~28匹の幼虫がふ化し、小さく産んで大きく育てます。

 狭い部屋においても、一匹でも見かけたら、まだ残り13~15匹が何処かに隠れていますので、じっと凝視して見つけしだい捕獲します。体長は約5ミリで、3ミリほどの長い触覚があり、イノシシの子供に似た特徴があります。白い縞模様が横に4本あり、尾がピンと立ち上がった、まさにゴキの「瓜坊」です。一見、可愛らしい幼虫ですが親に似て逃げ足が速いのに驚かされます。

 メスの成虫は部屋の中を隈無く探索し、格好の産卵場所を求めて歩き廻ります。産卵場所は厨房周りの隙間に限らず、本箱やタンス等の壁との隙間、家具の底部の隙間、戸棚の中や引き出し等、辺り構わずで、1cmほどの円柱の黒いカプセル(卵鞘)を放出し置き去りにします。一匹一夏で平均5個産卵します。

《ゴキブリの糞でわかるゴキの年齢(Age of roach)》

 黒色の糞は05~1.5mm位の大きさであり、小さいのは幼虫のものであり、大きいのは成虫の糞です。何処にでも糞を落としますが、縄張りを示すように主に一カ所をトイレとする習性があり、大量に糞をします。掃除機の入らない隙間には夥しい数の糞が散在しています。

 あの黒い羽ねを持つ成虫のメスとオスは見かけでは判別はし難たく、幼虫4~6匹でハーレムを作って暮らしています。

 夜行性であり、午後7~11時頃成虫は決まって産卵場所を求めて行動を開始します。良く壁や家具の縁に沿って行動すると考えられていますが、人影を感じるなど、警戒している場合に限られる行動で、通常は最短距離を堂々と部屋の真ん中を真直ぐ歩き回り、縦横無尽に行動します。障害がある時には飛翔します。卵はポコット産み落とすか、粘液で家具の底部になどにくっ付けてふ化を待ち、卵鞘が破れて幼虫に孵(かえる)まで、室温条件にもよりますが、だいたい7日から14日未満です。

《ゴキブリの弱点(Weak point)は二つある》

 ゴキブリの弱点の一つは歩く際に、多くの爪により足音をたてることです。聞き耳をたてれば、忍び足でもカサ・カサと音を立てて歩きます。他の弱点として粉類が苦手な点にあります。粉類が足に付着すると滑って歩行困難になりますから捕獲しやすくなります。使い残りのある粉袋のチャックを少し開いて置けば、ゴキブリの成虫は粉まみれになり這い出ることができません。少量の天かすを入れて誘えば面白いように捕獲できます。これは筆者の発明ですが出願していません(笑)。音に感じて開閉して誘い込む『ゴキブリ来い恋』等、誰か、ご興味があれば特許出願して下さい。

《ゴキブリの退治方法1(extermination method1)》

ゴキブリの成虫を殺虫剤スプレーで追い込んでも、なかなか殺す事は困難であり逃げられてしまいます。バタバタしている成虫を、直ぐに探し出して駆除しなければ意味を持ちません。卵鞘の内部にまで殺虫剤成分を浸透させる事は困難で、堅い鎧でできた卵鞘は健在で、親のゴキブリが死んでも、夏場は、4~6日でふ化してきます。

 ゴキブリの出没する時間帯は、人の気配があってもなくても、初夏で、8時から12時、秋口の夕方で7時から12時の間、出没時間はだいたい決まっています。人の足音がしなければ、テレビの音があっても構わず出てきます。

 成虫は主に、お勝手周辺に住み着いていますので、ゴキブリの動きを、流しに落とすように、殺虫剤スプレーを放つこと、慌てず、液体洗剤を1滴たらせば、皮膚呼吸の昆虫ですから瞬時に絶命します。

 聞き耳をたてれば カサット足音がするので、じっと殺虫剤を構え噴射の準備をしながら、体を動かさないことが肝要です。頭だけを左右、上下、縦横無尽に凝視しながら動かして、発見すること、殺気に気づいて物陰に静かに体を回しじっとしていますから、スプレーを構えて一気に早撃ちスプレーを実行します。

 慣れてくると、一度で成虫を3匹、スプレー噴射できます、噴射の心得は、ゴキブリを何処へ落とすかにあります、ゴキブリは危険を感じてジャンプする習性があり、成虫の頭の向きを確認してその少し前方に向けてスプレーを放つようにします。

 水回りの上に成虫を見つけた場合、なるべく洗い槽に落とすように、逃げる向きを考えて殺虫剤をスプレーします。市販のスプレーでは、なかなか死にませんので、洗い場におとし、直ちに液体洗剤を数滴かけることで絶命できます。

《ゴキブリの退治方法2(extermination method2)》

 ゴキブリはナフタリンや樟脳が大の苦手ですから、掃除機の入らない家具の隙間や、流し台の中にナフタリンを仕込みます。たまらず、餌場の水回りから、成虫も幼虫も出てきます。前の場所には二度と戻りませんから駆除しやすくなり、いつの間にか見かけなくなります。

              以上、下宿先での経験から、ご参考まで。

               株式会社ライラック研究所 

         研究所長 工学博士/科学エッセイスト 平岩 節(たかし)