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インフルエンザとマスク、その意外な落とし穴

 

インフルエンザとマスク、その意外な落とし穴

 マスクの濾過率(ろかりつ)が高い、高性能のマスクほど、空気の通気抵抗が大で、呼吸の際に息苦しさを感じます。塵埃などの捕足率と通気抵抗は相関関係にあり、快適なマスクほどウイルスや細菌の捕足率が低いことを意味します。

 ウイルスや菌体は飛沫という球状の水滴(数ミクロン~数百ミクロン)に含まれ、それがクシャミや吐息により放出し拡散しますが、飛沫粒子の特徴は、それに含まれる水分や、粒子の径が小さいほど、衣服などへの付着力は低下し、雰囲気に拡散し漂う性質があります。  

      ※ 1ミクロンは1000の1ミリ

 そのため空気抵抗の少ないマスクと顔の接触面の隙間は、マスク表面よりも通気速度が増大するので、ウイルスや細菌が侵入し易くなります。一般に異なる物質間の間隙は空気抵抗が小さいことにも関係しています。

 仮に濾過率100パーセントのマスクを使用したとしても、呼吸をする度に、それらの隙間から異物の侵入を許容してしまいます。

 数ミクロンの湿潤させた着色粉体(エアロゾル)をウイルスや細菌に見立て、室内に分散させて市販のマスクによる吸気試験を行ないますと、市販のマスクは概ね、マスク上部の縁、鼻の左右の谷間の接触面の間隙からの侵入が最も大きく、次いでマスク下部の口の左右の角、頬との接触面からの侵入とマスク表面および内部面、鼻腔の近傍が大でした。

 着色粉体の軌跡は、頬や口もとに鮮やかに、侵入した線条の軌跡や模様を描きます。

 人混みが多い場所での予防対策としては、安価な簡易マスクの中にティシューを1、2枚二つ折りにしマスクの縁からはみ出るようにして挟み、ティシューを時々交換することで、ほぼ99%、異物の侵入を阻止することが解りました。

 インフルエンザウイルスは飛沫感染が有力だといわれていますが、飛沫は静止雰囲気(タバコの煙がほぼ真直ぐ立ち上る状態)で数メータ、電車等の車内では、加速度により気流が大きく動き、変化しますので数十メータ以上拡散し移動すると考えられます。

 インフルエンザの予防には、うがいや手洗いのみ強調されていますが、身にまとった衣服による二次感染にも注意を払う必要があると考えられます。

 一見、乾燥しているように見える着衣も、15~25%の水分を含み、この水分を好条件として、ウイルスや病原性細菌は、付着吸着し生存しています。それらのウイルスは、室内の温度や湿度の影響をうけて再び飛散し、二次的感染源の恐れがあると考えられます。

 部屋に入る際は、上着やズボンは外のベランダ等に数時間、曝して水分を乾燥させることが重要です。特にズボンの裾の折り返し部の中の塵埃はウイルスや細菌の温床となるので、日頃から清掃を心がけることが大切です。

 また、風邪などのインフルエンザ予防には、うがいや手洗いの他、アルコール消毒が有効だといわれています。

 飲酒愛好家の中には、酒の殺菌効果で感染を防止できると豪語する人がいますが、これは単に迷信に過ぎません。

 酒や焼酎、洋酒等の低濃度のアルコールでは、静菌作用(菌が死んだ振りをする)は期待できますが、菌類やウイルスを滅菌することはできません。滅菌するには少なくとも65%以上の高濃度のアルコールを必要とします。但し、芽胞菌類は適用外。 以上、ご参考まで。

      自然科学研究所(株)ライラック研究所

                研究所長 平岩節

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